しまむら5期ぶり減益
ファッションセンターしまむらやアベイル、バースデイ、シャンブル、ディバロなどを運営する㈱しまむらの2014年2月期連結決算は売上高4,973億17百万円(前年同期比2.0%増)、営業利益421億50百万円(同7.4%減)、経常利益441億93百万円(同7.1%減)、当期純利益は267億37百万円(同2.6%減)となり、5期ぶりの減益となりました。
平成26年2月期 決算短信(pdfファイル)|しまむら
http://www.shimamura.gr.jp/finance/file/61_04_tanshin.pdf
平成26年度の業績見込みは強気
今期は減益でしたが、平成26年度の業績見込みは売上高5,340億円(前年同期比7.4%増)、営業利益は510億円(同21.0%増)、経常利益525億円(同18.8%増)、当期純利益317億円(同18.6%増)を掲げており、出店数も70(今期は目標70で実数50)を計画されており、非常に強気な数字が並びます。
当期はプライベートブランド強化
大幅増益に向けて当期はグループ全体で「価値と価格のアピール」を共通テーマとして意識し、利益率の高いプライベートブランドを強化し、高感度の「Sorridele(ソリデル)」、高品質の「CLOSSHI(クロッシー)」、低価格の「FREUDE(フロイデ)」の3ブランドに集約し、価値と価格を分かりやすくアピールし業績向上を図っていくとの事。
また主生産地であります中国での人件費の高騰や原材料の調達コストの増加には「1アイテム当たりの発注増と商談の早期化による生産コストの低減に加え、直接物流の比率を上げることで物流コストを削減」で対応していくとの事です。
また他のファストファッションブランド同様、価格帯を上げた商品の販売による客単価の増加を成功させたい考えで、商品価値を上げる事で少し上の価格帯の商品を販売し、客単価の増加を見込んでいるようです。
出店傾向の変化
元々、しまむらは郊外型の出店が多く、5000世帯を1商圏とし郊外に1億円で自社店舗を建設し、3年で回収するという出店スタイルで、郊外のロードサイドなどを中心に出店してきましたが、近年はイオンモールなどとの激しい争いになっている現状もあり、広島のイズミや滋賀の平和堂への出店を皮切りに、ショッピングモールや百貨店への出店を加速させる考えで、既に大津パルコや津田沼パルコといった百貨店にも出店を果たしており、また出店地域も当期は東京や大阪の都市部を中心に出店していく計画のようで、今後は出店傾向を変化させ、時代に順応させていくようです。課題は?
平成25年度のしまむらにはSPAブランドではない同社の「全商品仕入れ」スタイルの欠点が露呈した事件が2件発生しました。一つは納入業者が個人作家の生み出したキャラクターをそのまま盗用してデザインした子供服をしまむらに納入し、一時、しまむらの対応に対してネット上で炎上しかけた事案。
しまむらデザイン盗用騒動は販売中止・商品回収で決着。|F-log
http://log.f-street.org/2013/12/blog-post_28.html
またつい最近発生した京都西川がしまむらに納入した毛布の品質の誤表示で4000点の回収をした一件。
京都西川、また品質表示に誤り しまむら、毛布4千点回収|47news
http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014032801002359.html
どちらも納入業者による不手際ですが、結果しまむらが回収する事になり、しまむらのイメージダウンにもつながりました。
納入業者としては、しまむらが仕入れてくれるとなると一気に1万点規模の受注が可能になり、無理なコストカットをしてでもしまむらに売り込みに来るので、結果、上記のようなエラーの発生を生む可能性が増大します。
元々、発注数の多さを売りに仕入れコストをカットして安価で商品を提供し成長してきた企業ではあるのですが、昨年度にこのような事例が表立って発覚しただけでも2件発生しており、よりエラーを起こりやすくする可能性のある「1アイテム当たりの発注増と商談の早期化」によるコストカットはあまり好ましい施策ではないように思えます。
また数年前よりしまむらがブームを起こした背景に、「中小業者からの納入による商品の売り切りのため、SPAブランドの大量生産品に比べると生産ロットが少なく、低価格なのに他人とかぶりにくい」という全商品仕入れによる副産物的なメリットがあり、益若つばささんやピーターさんといった影響力のある芸能人に多く取り上げられた事で「シマラー」という言葉が生まれるほど若者に波及しましたが、1アイテム当たりの発注増により、そのメリットは減少してしまうのではないかといった懸念もあります。
また消費税増税による消費の冷え込みには、
- 幅広い国内消費の活発化へと続くもの
- いよいよ本格的な景気回復軌道に乗る
- 金融の異次元緩和からスタートした円安・株高等のアベノミクス効果は今後も継続
- 大多数の企業の業績回復による久しぶりの賃金ベースアップは、勤労世帯にとって所得増以上に将来への期待感を増幅させ、消費の好循環は大衆一般にまで広がるものと予想されます。
また最も増益の鍵を握りそうな「価格の維持とプライスレンジの拡大」という点はユニクロも苦戦しており、少し価格帯を上げた商品を置いたところで、結局、売れるのは低価格商品だったり、またイベント時のセール品といった値下げ商品に人気が集中する傾向をどう打破するのかが鍵となります。
個人的にはしまむら事業は当期も苦戦を強いられそうな印象を持っています。
一方、平成25年度も前年同期比13.5%増の267億72百万円を達成した好調のベビー・子供服のバースデイ事業は今後も大きな戦力となりそうで、こちらは大きな成長が期待出来るのではないかと思います。
平成26年度は国内No.2のアパレル企業しまむらにとって、今後を占う上で重要な年になりそうですね。