ファストファッションブランドとの差別化をするのに”素材で差別化”は無理があ る。

日本経済新聞にこんなファッションニュースが出ていました。

衣料関連大手、素材で差別化 低価格ブランドに対抗|日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11002_S4A810C1MM0000/

衣料品関連の大手企業が産地や機能で特徴のある素材を相次いで取り入れる。伊藤忠商事はペルー産の高級綿を使ったシャツなどを売り出し、そごう・西武はハンガリー産の羽毛のコートを発売する。合成繊維でも東レがナイロンの新素材の出荷を本格化する。欧米系の「ファストファッション」など安くてデザイン性の高い衣料品が増えるなか、素材で違いを打ち出すことで品質にこだわる消費者を取り込む。

これは方向性が間違っています。
素材の違いでは消費者を取り込むのは難しいと思います。

まず第一に素材の違いはわかりにくい。
ユニクロの使用している綿と、ペルー産の高級綿の違いが果たして消費者に伝わるでしょうか。
恐らく9分9厘の人が触れても全く違いがわからないと思います。

そうなってくると言ったもん勝ち的な発信力勝負になりますが、ユニクロがプッシュするスーピマコットンや無印良品のフレンチリネンなどにブランディング勝負で勝てるでしょうか。
ハッキリ言って勝ち目はないでしょう。それほどにユニクロや無印良品の発信力は強いです。

また高機能化繊の勝負となると、既にユニクロのヒートテックなどは他の追随を許さないほどのネームバリューと良好なイメージを獲得しています。
恐らく素材の違いなんて、よほどの生地オタクでもない限り見分けるのは難しいと思います。

またユニクロはじめファストファッションブランドは安く素材を調達してコストを抑えているのではありません。
勿論、安く抑える努力はしているでしょうし、他のブランドに比べ安く調達しているかもしれませんが、その中で良い素材を追い求め探し出し使用しているわけで、そこがコストダウンの最重要ポイントではないはずです。

ファストファッションブランドが最もコストを抑えているのは近年問題になってきている製造面。人件費です。
恐らく、上記の”衣料関連大手”もほとんどの製品を中国をはじめとするアジアで製造している事と想像します。
最も差別化を図るべきところで差別化を図れない。
ファストファッションブランドは「安くてデザイン性の高い衣料品」だけではなく、「安くてデザイン性が高く素材も良い衣料品」と消費者は認識しているはずです。

消費者が「ファストファッションブランドのものは素材が悪い」と認識していれば、そこは大きな差別化のポイントになるでしょうけど、残念ながらそうは行かない。
「それ以上にもっと良いんです!」なんてブランディングはよほどの実証をしない限りまず成功しない。
同じようにコストの安いところで作っておきながら「こっちの方が素材にこだわっているから○倍の値段で買って」と言っても消費者のマインドは動かせないと思います。
それほど現在のファストファッションブランドは強い。

ファストファッションブランドと差別化を図りたければ残されている余地は製造国・製造地・製造方法ではないかと思います。
衰退する国内繊維産業に今一度光を当て、その技術力の高さを存分にアピールしていくことは、ファストファッションブランドには出来ない芸当だと思います。
30代のファッション論でも書きましたが、エシカルで作り手の思いの詰まった商品を作り、アピールして行くしか差別化を図る方法はないのではないでしょうか。