クラブNOON風営法裁判無罪・摘発時、大阪のクラブシーンで何が起こっていたのか?

NOON風営法裁判無罪判決

昨日、2014年4月25日大阪地裁でダンスクラブ「NOON」の風営法裁判が行われ、大阪地裁斎藤正人裁判長は被告であるNOONの元経営者、金光正年被告に無罪を言い渡しました。

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ヌーンの摘発があったのは2012年4月4日。
この頃、警察によるダンスクラブの摘発が相次いでおり、特に大阪のミナミ、特にアメリカ村を中心に警察による家宅捜索(以下ガサ入れ)が相次いでおりました。

この辺り、リアルタイムでF-STREET CHIEF'S BLOGでも記事を書いていました。




その時大阪のクラブシーンでは?

キッカケは2010年12月6日午前3時6分。
アメリカ村でクラブ営業していた「アズール」と「ドンフレックスラウンジ」にガサ入れが入り、「客に無許可でダンスをさせた」として経営者や店長などを逮捕。

その後、2011年2月1日未明にアメリカ村のクラブ「ジュール」にガサ入れが入りこちらも「無許可で店内で客にダンスをさせてクラブを営業した。」として摘発。こちらも経営者と店長らが逮捕されました。

さらに2011年3月28日には同じくアメリカ村のクラブ「ルナークラブ」と「トライアングル」が摘発を受けています。

と、一気にアメリカ村だけで5店の摘発が相次ぎ、摘発されなかったグランカフェもBARに営業形態を変えたり、その他のクラブも休業や廃業、業態変更に追い込まれました。またアメリカ村ではないものの東心斎橋地区鰻谷の鰻谷サンスイもライブハウスへと業態を変えました。

2011年10月28日に大阪ミナミのクラブ・ライブハウス12軒に警察や消防などが一斉に入り、風営法や消防法に違反している店舗(全店)に警告や改善命令等が行われるなど、この間、東京をはじめとする日本の他の地域ではほとんどクラブの摘発などが行われることはなく、大阪のミナミ地区だけが異常なまでの取り締まりを受けました。

摘発を受けたクラブの共通点

この段階で、摘発されたクラブの共通点として朝まで営業しており、いずれも午前3時など深夜帯での営業時にガサ入れを受けており、当初は「深夜の騒音などで地元住民から苦情があったため」に捜査が行われたとされており、また風営法の規定で「営業は深夜12時まで」とされているため、摘発を免れたクラブなどは一斉に営業時間を12時までとするようになりました。

ヌーンの摘発は21時43分

ところがこの後、警察の捜査はミナミ地区のとどまらず大阪のキタ地区にあたる中崎町で営業する創業18年の老舗NOON(ヌーン)を摘発。
この家宅捜索は21時43分に入っており、これまでの「ミナミ」「深夜帯」という共通点を全く覆すもので、創業18年の老舗の摘発ということもあいまって大きな衝撃を与えました。
実際、ヌーンは一連の騒動後、いち早く営業時間を24時(23時だったかも?)までに変更しており、この摘発を機に警察の本来の狙いは「クラブが薬物蔓延の温床になっていると疑っている」「反社会勢力との繋がりを疑っている」などとされるようになりました。

京都ワールドも摘発されていた

このヌーンの一件の前に、2011年12月に京都の老舗ワールドが摘発されており、こちらは風俗営業許可を届け出ておりましたが、こちらはBAR設備を設けていた事が風俗営業法違反(無承認構造変更)に当たるとして摘発を受けており、こちらも衝撃だったのですが、大阪ではなく京都だった事と、これまでとは違った理由で踊らせたことが理由ではなかったため、ヌーン摘発時はそれほど共通した問題とは考えられていなかったように記憶しております。

ヌーン側が対決姿勢を示す

これまでは深夜営業での騒音が問題で、「風営法違反」で摘発を受けていたため、各クラブ関係者は一様に罪を認める形で決着しておりましたが、このヌーンの摘発は22時前だった事もあり純粋に「客を踊らせた事」が風俗営業に当たるかどうかに争点が移り、ヌーン側は「憲法21条1項の保障する表現の自由、憲法22条1項の保障する営業の自由を不当に侵害する違憲の法律である」と主張し、真っ向から対決姿勢を鮮明にしました。

無罪判決とその理由

そして裁判が2014年1月に結審し、検察側は懲役6ヶ月罰金100万円を求刑しましたが大阪地裁は無罪の判決を言い渡しました。
無罪判決の理由として「摘発されたクラブで行われていたダンスは、法律で規制の対象となる『性風俗を乱すおそれがある享楽的なダンス』には当たらない」とされており、これまで摘発を受け続けたクラブで行われているダンスが性風俗には当たらないと指摘されました。

ただ、この判決で国内のクラブが大手を振ってオールナイトイベントが出来るようになったというわけではなく、今回の裁判でもヌーン側が主張する風営法が違憲であるという主張は退けられており、今後も厳しい風営法の規制の中で運営していかなければなりません。
また、検察側としても、このままでは判例として残ってしまい、今後のクラブ規制に影響が出てしまいかねないので、控訴する事は間違いのないところで、まだまだ決着は先となるのではないかと思われます。

ただし、今回の判決は今後の法改正への流れを加速させる第一歩になる事は間違いなく、これまでの経緯を考えると画期的な判決が出たといえます。