アパレル業界にも増税による駆け込み消費はあったのか?

アパレル業界・消費税増税の影響は?

4月1日から消費税は8%に増税されました。
経済成長が鈍化する中での増税で安倍首相のブレーンである浜田宏一内閣参与が増税直前に「将来が分かって、実質成長がこのくらいになると分かっていたら、もう少し慎重論を強く言うべきだったかもしれません」と話すなど、今後の確実な消費の冷え込みが心配されていますが、ではアパレル業界に増税前の駆け込み特需はあったのでしょうか。

百貨店の場合

増税駆け込みで百貨店3月販売大幅増 名古屋松坂屋57%増、日本橋高島屋41%増|WWD JAPAN
http://www.wwdjapan.com/business/2014/04/01/00011109.html

百貨店の3月度販売は、消費税増税の駆け込みによって前年同月に比べて120~130%台の大幅増収になった。特に宝飾・時計、ラグジュアリーブランドなどの高額品は駆け込みが殺到し、2~3倍に跳ね上がった。大手5社の売上高は三越伊勢丹が124.2%、大丸松坂屋百貨店が136.0%、高島屋が132.1%、そごう・西武が122.0%、阪急阪神百貨店が126.5%だった。
(中略)
1997年の消費税増税時も百貨店は3月の販売が急伸する一方、4月は85%前後に落ち込み、その後も反動に苦しんだ。各社は「(金融危機などで)景気が極端に悪化していた当時ほど悪い状況にはならない」と口を揃えるものの、反動の対策に乗り出す。高島屋は3月12~25日まで5000円以上の買い物をした消費者に4月の1ヵ月間だけ使える1000円クーポン(1万円以上の買い物で使用可)を配布した。大丸松坂屋も4月4~6日までメール会員を対象に各店で先着3万人に500円クーポン(5400円以上の買い物で使用可)を配る。一部では春物セールの前倒しも計画されている。
百貨店業界は明らかな駆け込み消費があった模様。
反動は前回増税時ほど悪化はしないといった予想がされているが、客観的に見れば駆け込み消費があったのは事実で、間違いなく大きな反動が来ることが予想されます。
またクーポンの配布や春物セールの前倒しといった値下げでの対策にも危機感を感じる事が出来ます。

ユニクロの場合

ユニクロ3月既存店売上高微増、消費税増税前の需要は限定的|産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140402/biz14040217220021-n1.htm

ファーストリテイリングが2日発表した衣料専門店「ユニクロ」の3月国内既存店売上高は、前年同月比0.6%増と、5カ月連続で前年実績を上回った。客単価は7.5%増で、6カ月連続でプラスとなったが、客数は6.4%減で、2カ月連続で減少した。消費税増税前の駆け込み需要はほとんどなかったもようだ。
 3月は関東地方などで前半は寒い日が続いたが、下旬は気温が上昇した。このため、冬物衣料の「ヒートテック」と春商戦向けの速乾性肌着「エアリズム」の販売が好調だったという。

国内最大手ユニクロは駆け込み需要は限定的だった模様。
ただ「冬物衣料の「ヒートテック」と春商戦向けの速乾性肌着「エアリズム」が好調」というのは気温や天候以上に、駆け込み需要のような感触はありますね。

ユニクロのように比較的トレンドに左右される業態は洋服よりも肌着や下着といった比較的流行に左右されないアイテムが動くのは予測される話で、価格的にも余計に買ってストックしておきやすい商品ですので、ヒートテックとエアリズムの好調はやや駆け込み需要でも動いたのではないかと思われます。

下着類肌着類に限定的な反動は来そうですが、増税による買い控えのような反動は限定的で済みそうですが、国内全体に漂う消費を控えるマインドはユニクロのような大衆向けの業態に直撃しそうな予想をしております。

セレクトショップの場合

セレクトショップの情報があまり出されていないのですが、ユナイテッドアローズの2013 年3月期の決算説明会で興味深い事が述べられています。
株式会社ユナイテッドアローズ 2013 年3月期 決算説明会 質疑応答集|UNITED ARROWS
http://www.united-arrows.co.jp/uploads/_archives/ir/pdf/shitsugi_2503.pdf

「消費増税について、97 年の増税の際に当社はほとんど影響を受けなかったと分析している。
今回まったく同様になるとは思っていないが、基本的には上記同様商品力を向上させ、価格の納得性を高めていきたい。」
百貨店では影響が甚大だった97年の増税時にユナイテッドアローズはさほど影響を受けていなかったようです。

結論

消費税増税の駆け込み消費があったのは増税の影響の大きい高価格帯の商品を扱う百貨店、そしてファストファッションブランドなど購入しやすい価格帯の商品を扱うショップやブランドの流行に左右されない下着や肌着類などが限定的に駆け込み購入されている気配です。

反対にトレンドに左右されやすく、ミドルレンジの価格帯の商品を取り扱うセレクトショップなどはあまり駆け込み消費はなかった模様。

当然、反動も駆け込み消費があった所に甚大な影響を及ぼす事と、消費税増税で消費マインドに変化が出てくる事が予想され、今後のトレンドの変化はファストファッションからミドルレンジの価格帯の業態への流れが加速するのではないかと推測されます。

ちなみに私の場合

私の場合は今回の増税は意欲的に駆け込みで買い溜めました。
購入したのは、愛用している無印良品の肌着、OUTDOORのサーマルレギンス、ユニクロのパンツといった肌着&下着類。
そして2年ほど「次のボーナスで」「次のボーナスこそ」とずっと欲しいと思っていた10万円近くのスーパーヴィンテージを購入(詳細は近日F-STREET CHIEF'S BLOGで)。
まさしく世の流れと同じく、増税の影響の大きい高価格帯のものと、あまりトレンドに影響されない買い溜めても影響の少ない下着・肌着類を購入しました。
これらを駆け込みで買ったのは、高価格帯のものは現金化しやすく、低価格帯の下着・肌着類はストックをしていてもそれほど家計や収納場所に影響がないので、買い溜めや駆け込み消費しやすいという側面もあります。

※参考記事
消費増税控え浜田参与「慎重論言うべきだった…」|テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000024085.html