ジーンズは色落ちしにくいデニム時代に。

昔は良い色落ちのジーンズがステータスだった

私が若い頃(現在35歳)、あえて昔と言おう。
昔、色落ちの良いジーンズを穿いているのは一つのステータスだった。
若者は年がら年中同じジーンズを穿き、「良い色落ちをさせるには洗わない方が良い」「ジーンズを穿いて寝ると良い色落ちになる」「引っ越しの手伝いにジーンズを穿くと良い」「ジーンズを穿いたまま風呂に入る」なんて情報が普通にファッション誌に載っており、大なり小なりそういった情報を鵜呑みにして実行したものである。

今求められているのは色落ちしにくいブルーデニム

EDWINが伊藤忠の支援を受けるようになってから、今後どうなっていくのか注目して見ているのだが、今日、こんな記事を読んだ。

エドウイン14-15AWはハイウエスト流行で復活か|FASHION HEADLINE
http://www.fashion-headline.com/article/2014/04/14/5881.html

タイトル的にはEDWINがハイウエストジーンズをリリースするという話なのではあるが、記事の大半は「色落ちしにくいブルーデニム」にスペースが割かれている。

その中のこの商品が生まれたきっかけの部分に注目してほしい。

都心のセレクトショップやダブルネームを展開するSPAブランドから「色落ちしにくいブルーデニムが欲しい」という要望が多かったためで、同社の営業担当者は「デニムの売れ行きが回復傾向にあるが、カラーパンツの1色として見られているようだ」という。また、色落ちしにくいデニムの要望は従来型のジーンズチェーン店からは少ないとも話す。

つまりセレクトショップやSPAブランドの服を買っている世代、特に若い世代において、ジーンズの色落ちはさして重要なことではなく、カラーパンツの一種として見ている為、出来るだけ長くブルーデニムのカラーが残っている方が好ましいという事である。

ちなみに筆者の南充浩氏は以前にもこのような記事を書いている。

消費者は色落ちにあまりこだわっていない|南充浩の繊維産業ブログ
http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/3866116.html

この中にも非常にポイントとなりそうなキーワードが出てくる。

「あまり色の落ちてない生ジーンズを清潔に履いてるのって、格好いいんですけどね」(前出・31歳女)
「ああ、判るかも。あれって小綺麗に保つのが難しいんですよね。小綺麗に履き続けるためには、すぐ買い替えなきゃいけないから金がかかる」(前出・29歳男)
そう、つまりあまり色の落ちてない生ジーンズは清潔な印象なのである。

やや極論だが、これを「おいしい牛乳」という商品名の牛乳があるとそれ以外がおいしくない牛乳に思えてしまうので「おいしい牛乳」が値段が高いにも関わらず爆発的にヒットした、という「おいしい牛乳理論」に当てはめると、色落ちした雰囲気のあるジーンズは「不潔」に見えてしまいかねないという事である。

どうしてこうなった?

ここ数年、メンズファッションが女子受けに寄り過ぎた為、とにかく「清潔感」が重要視されるようになった。
清潔感のある綺麗なジーンズを求めれば必然「色落ちしないデニム」が理想で、ジーンズメーカーにもそういった要望が届くようになったのだろう。

またヴィンテージジーンズ→レプリカジーンズ→中古加工ジーンズと、ジーンズブームが一巡りし、流行から逸れて行った事や、今の若い世代がそれらのジーンズブームを体感していない事、またセレクトショップやファストファッションブランドの台頭で様々なカラーや材質のボトムスが安価で手に入るようになった事も大きいのではないかと思われる。

今後は?

では今後はもう色落ちの良いジーンズが求められることはないのだろうか?というと、決してそんなことはなく、流行が巡ればまた色落ちの良い(デニム生地として)高品質なデニムが求められる時代も必ず来るはずである。
近年、80's90'sブームがあり、最近はバブルファッションが話題になったりもしている。
流行は巡る。
ジーンズが売れない、ジーンズ業界苦境の時代だが、時代に順応して生き残っていくのか、次の流行が来るまでジッと我慢して品質の良いジーンズを作り続けて潮目が来た時に一躍スターダムに躍り出るのか、ジーンズメーカー各社の戦略に注目したい。