ワタミとユニクロの「ブラック企業裁判」2つに注目

注目のブラック企業裁判2件

先日、「アパレル・ファッション業界に正社員化の波。なぜ?どうなる? 」という記事を掲載しましたが、そちらが記事提供しているTHE NEW CLASSICに掲載された事もあり、大変多くの方に読んで頂きました。

その直後に注目の「ブラック企業裁判」が2件行われました。

そこでこの2件の裁判に注目してみたいと思います。

ユニクロ二審も敗訴

1件目はユニクロが、文藝春秋を相手取り「週刊文春」ならびに同社が発行した「ユニクロ帝国の光と影」に記述された内容が名誉棄損に当たるとして訴えた裁判。

訴えの内容としては「ユニクロでは店長がタイムカードを押していったん退社したように装い、その後サービス残業をしていると記載。労働時間は月300時間を超え、会社側も黙認している。」という部分を事実と異なり、名誉棄損であると訴えているようです。

当社は、6月3日、株式会社文藝春秋に対し、同社発行の週刊誌「週刊文春」並びに書籍「ユニクロ帝国の光と影」における記述が、当社および当社子会社が運営するカジュアルウェアブランドの「ユニクロ」の社会的評価・信用を不当に貶めるものとし、書籍の発行差し止めと回収、謝罪広告及び損害賠償を求め、東京地方裁判所に訴訟を提起いたしました。
当社は、1984年にユニクロ1号店を出店して以降、高品質のカジュアルウエアをお買い求めやすい価格でご提供すべく、企業努力を続けてまいりました。ユニクロは、幸い多くの消費者の皆様に支持をいただき、現在では国内外に約1000店舗を構え、売上高は6700億円を越えるに至りました。これを支えておりますのは、商品の企画から、生産、物流、販売までを統合した当社のビジネスモデルに他なりません。
しかしながら、本訴訟の対象としている記事ならびに書籍は、「ユニクロは、店舗運営において、苛烈で非人間的な労働環境を現場の店長ら職員に強制し、また、その取扱い製品の製造を委託している海外生産工場において、劣悪で過重な奴隷労働を行なわせている」かの如き表現を用いて、あたかも当社の利益は店舗や工場で働く方々の苦しみの上に成り立っているかのような内容となっております。
当社といたしましては、当社ならびに「ユニクロ」ブランドが、当該記事および書籍によって被った社会的評価・信用の毀損を看過することはできず、やむなく今回の訴訟提起に踏み切ったものです。
昨年10月の一審で東京地裁は"「月300時間以上、働いている」と本で証言した店長の話の信用性は高く、国内店に関する重要な部分は真実」と指摘。「中国工場についても現地取材などから真実と判断した理由がある」"と指摘、ユニクロの請求を棄却し、ユニクロ側が控訴していました。

3月26日の二審でも東京高等裁判所が、原告側(ユニクロ側)の請求をすべて退けた一審判決を支持し、控訴を棄却。
上告するかどうかはまだ未定のようですが、柳井正会長がブラック企業批判に対し強く反発する姿勢を取られているので、恐らく上告するのではないかと思われます。

様々な批判や報道もあり、過剰な長時間労働を防止する方針を取ってきたユニクロの今後の姿勢には、グローバル企業への成長を標榜する同社の今後の命運が掛かっていると言っても過言ではなく、今後の姿勢や動向にも注目して行こうと思っています。

ワタミの裁判は大荒れ

翌日27日にはワタミの過労死裁判の一審の第2回口頭弁論で当時代表取締役だった自民党参議院議員・渡辺美樹氏が出廷。



ファッション関係の会社ではないですが、クロスカンパニーやユニクロ、東急ハンズなどブラック企業批判を受けたファッションやアパレルに関係する会社の今後の対応や姿勢を評価して行く上での例として注目しておこうと思います。

この裁判は2008年、ワタミフードサービスに入社に神奈川県横須賀市の居酒屋チェーン「和民」で勤務していた森美菜さん(当時26歳)が141時間にも及ぶ残業と連日の早朝までの深夜勤務などで追い込まれ、「体が痛いです。体がつらいです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」と記した日記などを残し、投身自殺した事件で、2012年には労災認定されており、遺族が会社と当時代表取締役で現自民党の参議院銀でもある渡辺美樹議員に損害賠償を求めている裁判です。

裁判では渡辺美樹参議院議員は遺族に謝罪し頭を下げたものの、「法的責任に関して見解に相違がある」と争う姿勢を示し、またワタミ側も異常な長時間労働はなかったと反論しています。

この裁判、大荒れになったのは場外で、裁判の傍聴席を巡り、傍聴席を占拠しようとしたワタミフードサービスの管理職の職員と、そのせいで傍聴席に入れない遺族側や一般市民、マスコミの間で揉め、原告側と被告側の弁護団が協議し、後部の方の席の一部職員が退出するという一件があったようです。

数年前までならこういった事が起こっても、なかなか表沙汰になりませんでしたが、SNSの発達などで一気に拡散されてしまい、ワタミの姿勢に疑問の声が集まっています。

この辺りの件はネットメディアnetgeekが詳しく伝えています。

【速報】ワタミが裁判で傍聴席を占領して原告側を追い出しにかかった!「ワタミ出て行け」と罵声が飛びかう事態に|netgeek
http://netgeek.biz/archives/7928

【ワタミ傍聴席占領事件】渡邉美樹と広報が反論!「たまたま大勢の社員が自主的に傍聴しにいっただけ|netgeek
http://netgeek.biz/archives/8070

twitterでは以下のような声が上がっているようです。
  • ワタミが動員して 原告側の傍聴が少なくなるように妨害 卑劣極まりない ワタミのやり方
  • ワタミが動員して 裁判傍聴を妨害 ワタミが出て行けと罵声が飛びかっています
  • ワタミ裁判。傍聴席をワタミ職員が埋めるという異常事態。一般の傍聴者が座れない、入れない。
  • ワタミ裁判傍聴しようとしたら、ワタミが管理職を動員して傍聴席を占領。法廷に入る時に競り合いに。これは前代未聞だ。
  • 公休かは分かりませんが、ボードを持った人が社員の出欠を確認していたようなので、組織的に動いていたのではないかと思います。
  • ワタミが姑息すぎる。今日はワタミの過労死遺族が渡邉美樹氏らを相手取った訴訟の期日で、渡邉美樹本人が出廷した様子。それに備えてワタミの管理職20名ほどが法廷の入口をふさぎ、入口が開いてすぐに傍聴席の多くを埋め、遺族の支援者の多くを入れなくさせてしまったのこと。
  • ワタミの裁判に傍聴に来ましたが、ワタミの職制20名ほどが入口をふさぎ、入口が開いてすぐに入って傍聴席の多くを埋めています。多くの支援者が入れない状況です。前代未聞の事態です。
  • 【ワタミ過労自殺裁判】公判10分前に法廷に到着したら中から怒号が聞こえてびっくりした。第二回公判には被告の渡邉美樹氏が出席し、意見陳述するため、社員が動員された模様。危機管理室の室長が責任もって社員を引率していた。
  • 東京地方裁判所に来ています。ワタミの過労死裁判を傍聴するつもりだったのですが、傍聴席約50の大半をワタミ社員が占有していて、マスコミの方や市民が入れず揉めました。社員の何割かが渋々退出して決着。私は結局入れませんでしたが、面白い場面が見られて、来た甲斐はありました。
中には入り口をアーチ状に囲み塞いでいたとの話もあり、これらの話が事実であれば裁判に対しても群を抜いた対応が感じ取られます。

まとめ

ここ数年、従業員に対する過剰な要求や労働などが猛烈に批判され、最も批判が大きかったワタミは60%以上の減益に加え、人材不足による大量閉店を断行するなど、苦戦を強いられています。

ブラック企業批判された企業にとって、その後の対応や姿勢というのが企業成長の重要なポイントになると考えられ、その他の企業の是非を判断する上でも、この先のワタミ・ユニクロの2社の動向に注目です。

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)
  • 作者:横田 増生
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日: 2013-12-04