アースミュージック&エコロジーやトムブラウンニューヨークを展開する衣料品製造販売大手のクロスカンパニーが16年春の上場を目指し上場準備を本格化させると発表しました。
この発表から同社の動きがより活発化すると共に、各ファッション・繊維業界関係のメディアで取り上げられる回数が増えてきましたが、その中で新ブランド「コエ」の発表と共に「フェアファッション」という新定義を提案していくと発表された事に注目しています。
フェアファッションとは今までにはなかった言葉で、「フェアな生産するブランドこそが世界プレーヤー標準となる」(石川康晴社長)という考え方を軸に、"原料調達・紡績・縫製・物流の全工程でトレーサビリティー(履歴管理)開示する正当なサプライチェーンを世界に先駆けて作り上げる"とされています。
現在、ファストファッションブームの裏側で問題化してきている二つの大きな問題。
その一つは酷使されている途上国の縫製労働者の労働環境問題、そしてもう一つは短期間で大量生産をする事で生じる衣料品のゴミ問題です。
今回の「フェアファッション」の新定義の提案は、その中の特に途上国の労働者の問題に取り組む姿勢を示したわけですが、欧州では日本に先駆けて問題になりはじめているようで、そろそろ遅ればせながら我々もファストファッションブームの裏側で起こっている途上国の労働問題というものはどんなものなのかを知っておく必要があるのではないでしょうか。
ここ数年、バングラデシュでの縫製工場の火事や工場の崩落などが相次ぎ、その劣悪すぎる環境問題が表面化しましたが、バングラデシュの工場では農村から出稼ぎに来た労働者を中心に、劣悪な住環境と労働環境で12時間以上もの長時間労働を強いられ、中には子供が違法に働かされていたり、20時間にも及ぶ労働を強いられていた例もあるそうです。
また、スウェットショップ(搾取工場)という言葉があり、これは強制労働、児童労働、低賃金労働、長時間労働、セクシャルハラスメントなど、人権を無視した悪い条件で労働者を雇って搾取している工場の事を指す言葉だそうで、このような言葉が生み出されるような環境が普通にある状態で我々が購入する安価で大量生産の衣料品が生産されているのです。
そして、これらの製品は欧米を中心に日本にも輸出されており、我々が安く服を買う裏側でこういった労働者の酷使が行われているのです。
バングラデシュはイギリスの植民地だった事もあり、また日本は輸送コストなどもあり中国や韓国などアジアの中でも東側の国から進出していった経緯があるので、欧米を中心に、となっておりますが、この例はバングラデシュに限った話ではなく、縫製工場を経済成長の原動力としている途上国の国々で起こっている問題と認識する必要があります。
また、こちらの記事(プライマークにもっとお金を払わなければいけない + そのお金が確実に労働者まで「届く」よう見届けなくてはいけないわけ)ではイギリスの大手衣料品量販店「プライマーク」の名前が出ていますが、プライマークは昨年の売上高4500億円で世界第9位を誇るSPAで、同社は物価の高いロンドンで、ほとんどの商品が10ユーロ以下というプライスを売りに業績を伸ばしており、週末になると店内は大混雑、レジは大行列という状態になっているようです。
現在、日本には進出してきていませんが、スペイン、ドイツなど欧州の他の国には進出しており、欧州では非常に名の知れたファストファッションブランドです。
このような世界でも有数のファストファッションブランドの生産の裏側でこういった状態が生み出されており、我々が日頃馴染みのあるファストファッションブランドやショップでも製造の過程でこういった事が行われている可能性が高いと言えます。
縫製工場が途上国の経済発展を支えているのは確かですが、その裏側で「より安く」を我々が求めるがゆえにこうした人道上無視できない問題が起こっている事、そしてまた生産国がこうした途上国に移りゆく事で、日本の物作りの現場が疲弊していっている事を時代の流れとして受け止めるだけでなく、我々の消費嗜好も再考する必要があるのではないでしょうか。
「フェアな生産するブランドこそが世界プレーヤー標準となる」というクロスカンパニーの考え方は次の時代の世界基準になって欲しいと思うとともに、クロスカンパニーの姿勢がブレる事なく、「フェアファッション」の新定義が根付いていく事を期待したいと思います。
※参考記事
【総合】クロス、秋から「コエ」 世界に挑む|繊研プラス
http://www.senken.co.jp/news/31252/
ファッションと途上国の貧困|People Tree
http://www.peopletree.co.jp/ptlp/ft.html
バングラデシュ 劣悪な労働事情の実態|ワールドWAVE MORNING(NHK)
http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2013/05/0513m.html
この発表から同社の動きがより活発化すると共に、各ファッション・繊維業界関係のメディアで取り上げられる回数が増えてきましたが、その中で新ブランド「コエ」の発表と共に「フェアファッション」という新定義を提案していくと発表された事に注目しています。
フェアファッションとは今までにはなかった言葉で、「フェアな生産するブランドこそが世界プレーヤー標準となる」(石川康晴社長)という考え方を軸に、"原料調達・紡績・縫製・物流の全工程でトレーサビリティー(履歴管理)開示する正当なサプライチェーンを世界に先駆けて作り上げる"とされています。
現在、ファストファッションブームの裏側で問題化してきている二つの大きな問題。
その一つは酷使されている途上国の縫製労働者の労働環境問題、そしてもう一つは短期間で大量生産をする事で生じる衣料品のゴミ問題です。
今回の「フェアファッション」の新定義の提案は、その中の特に途上国の労働者の問題に取り組む姿勢を示したわけですが、欧州では日本に先駆けて問題になりはじめているようで、そろそろ遅ればせながら我々もファストファッションブームの裏側で起こっている途上国の労働問題というものはどんなものなのかを知っておく必要があるのではないでしょうか。
ここ数年、バングラデシュでの縫製工場の火事や工場の崩落などが相次ぎ、その劣悪すぎる環境問題が表面化しましたが、バングラデシュの工場では農村から出稼ぎに来た労働者を中心に、劣悪な住環境と労働環境で12時間以上もの長時間労働を強いられ、中には子供が違法に働かされていたり、20時間にも及ぶ労働を強いられていた例もあるそうです。
また、スウェットショップ(搾取工場)という言葉があり、これは強制労働、児童労働、低賃金労働、長時間労働、セクシャルハラスメントなど、人権を無視した悪い条件で労働者を雇って搾取している工場の事を指す言葉だそうで、このような言葉が生み出されるような環境が普通にある状態で我々が購入する安価で大量生産の衣料品が生産されているのです。
そして、これらの製品は欧米を中心に日本にも輸出されており、我々が安く服を買う裏側でこういった労働者の酷使が行われているのです。
バングラデシュはイギリスの植民地だった事もあり、また日本は輸送コストなどもあり中国や韓国などアジアの中でも東側の国から進出していった経緯があるので、欧米を中心に、となっておりますが、この例はバングラデシュに限った話ではなく、縫製工場を経済成長の原動力としている途上国の国々で起こっている問題と認識する必要があります。
また、こちらの記事(プライマークにもっとお金を払わなければいけない + そのお金が確実に労働者まで「届く」よう見届けなくてはいけないわけ)ではイギリスの大手衣料品量販店「プライマーク」の名前が出ていますが、プライマークは昨年の売上高4500億円で世界第9位を誇るSPAで、同社は物価の高いロンドンで、ほとんどの商品が10ユーロ以下というプライスを売りに業績を伸ばしており、週末になると店内は大混雑、レジは大行列という状態になっているようです。
現在、日本には進出してきていませんが、スペイン、ドイツなど欧州の他の国には進出しており、欧州では非常に名の知れたファストファッションブランドです。
このような世界でも有数のファストファッションブランドの生産の裏側でこういった状態が生み出されており、我々が日頃馴染みのあるファストファッションブランドやショップでも製造の過程でこういった事が行われている可能性が高いと言えます。
縫製工場が途上国の経済発展を支えているのは確かですが、その裏側で「より安く」を我々が求めるがゆえにこうした人道上無視できない問題が起こっている事、そしてまた生産国がこうした途上国に移りゆく事で、日本の物作りの現場が疲弊していっている事を時代の流れとして受け止めるだけでなく、我々の消費嗜好も再考する必要があるのではないでしょうか。
「フェアな生産するブランドこそが世界プレーヤー標準となる」というクロスカンパニーの考え方は次の時代の世界基準になって欲しいと思うとともに、クロスカンパニーの姿勢がブレる事なく、「フェアファッション」の新定義が根付いていく事を期待したいと思います。
※参考記事
【総合】クロス、秋から「コエ」 世界に挑む|繊研プラス
http://www.senken.co.jp/news/31252/
ファッションと途上国の貧困|People Tree
http://www.peopletree.co.jp/ptlp/ft.html
バングラデシュ 劣悪な労働事情の実態|ワールドWAVE MORNING(NHK)
http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2013/05/0513m.html