ファーストリテイリング香港上場。その狙いは?

ユニクロやジーユーを展開するアパレル業界国内最大手のファーストリテイリングが5日、香港証券取引所に上場を果たした。
初値は28.6香港ドルで一時は36香港ドルまで上昇したようだが、終値は28.9香港ドルに落ち着いた。

アジアには中国・インド・インドネシアなど、人口が多くファッションの西洋化が進む魅力的な市場が多数あり、ファーストリテイリングはこの国々への出店に精力的に取り組み始めており、今回の香港での上場により、2014年をグローバル企業元年と位置付ける同社の海外展開・アジア展開が加速する事が期待されている。

しかしながら、低調な取引で知られるHDR(香港預託証券)の方式での上場で、また香港上場では新たな株式は発行せず、資金調達は予定されていない。
またワォールストリートジャーナルによると「低調な取引で知られるHDR市場で、投資家の関心を集められるかには疑問の余地がある。」との事で、今回の上場には株式市場での本来のメリットや狙いとは別の所に本当の狙いがあると見る向きもある。

勿論、今回の上場でのアジア圏内での知名度の向上は大きな狙いとして挙げられており、アジア圏内への出店の追い風にしたい考えで、実際にブランド認知度や信頼度が目覚ましく向上する事は間違いない。

その他に、上場による企業としての信頼度の向上で、人材採用において中国を始めとする現地での優秀な人材の確保に繋がる事が期待される。柳井正会長の著書「現実を視よ」でも、現地での幹部や店舗責任者の登用をグローバル企業を目指す上での海外展開における重要なポイントとして挙げられており、優秀な人材の確保という期待が今回の上場のおける狙いとして相当大きいのではないか。

ユニクロは国内市場では頭打ち状態で2013年8月期の連結決算では3期連続の減益を記録しており、低価格がウリのユニクロという世間イメージからの脱却を図っているが、今冬もヒートテックやダウン、フリースに取って代わる新たなヒット商品は出ておらず、未だにその見通しは立っているとは感じられない。世の中の消費動向の変化に対応しようとはしているものの、まだまだ追いついている印象はなく、グローバル企業を目指し2020年までに1000店舗の海外出店、数年のうちに国内と海外の出店店舗数を逆転させるなどの目標が出されているが、国内での頭打ち分の成長を好調な海外市場に求めている印象は強い。

少し話は飛躍するが、特にアジア市場は国民の所得などを考慮すると、低価格高品質という明確な強みを持つユニクロには日本市場に比べて数段魅力的で、将来的には海外での売り上げが国内売り上げを圧倒する事が現実味を帯びてきており、柳井会長の中では将来的に本社機能を海外移転・・・などといったプランも漠然とは持たれているのではないだろうか。

※参考記事
ファストリ、香港上場果たす|ウォールストリートジャーナル
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304278504579420474062729580.html

ファーストリテイリング香港で上場|F-log
http://log.f-street.org/2014/01/blog-post_5825.html